最新情報2001.08治療プログラム

60歳女性の出産(高齢出産・高齢妊娠)

この夏、日本最高齢とされる60歳の女性が卵子提供を受け、高齢妊娠・高齢出産したニュースがメディアで大きく取り上げられました。
不妊治療の辛さと日々直面していらっしゃる多くの女性達からは、「60歳で出産できるのであれば、きっと私も!」と希望が持てるようになった、あるいは勇気づけられた、と喜びの声が聞こえてくるに従い、こちらサンフランシスコでは非常に複雑な思いでこのニュースを受け止めていたのも事実なのです。

数々の困難に打ち勝って念願のお子様を得られた60歳の女性とそのご主人様のお慶びはいかほどかと思いますし、個人の選択としてそのような道を選び夢が叶ったのですから、ご夫婦個人に対しては、お祝いの言葉以外は考えられません。
しかし、多くの不妊治療患者を勇気づけたこの高齢妊娠・高齢出産のケースも、こちらカリフォルニア州の生殖医療クリニックのあいだでは、遺憾の気持ちを持つ医師が少なくないのです。それは、どうしてでしょうか?

そのような医師達のクリニックはすべて、卵子提供を受けて妊婦となる女性の体外受精サイクル開始の締切を、その女性の満55歳の誕生日、としています。 これは、妊婦となる女性の生命への危険と健康への危険に対する医学的な懸念がその理由です。
いくら健康な20代の女性から卵子の提供を受けても、50歳以上になった女性の身体の機能は、それだけ妊娠・出産に対するリスクが高くなっていくからなのです。

カリフォルニア州の優秀な生殖医療クリニックにおいては、先端医療であるからこそなおさら、医療技術のみならず、精神面、倫理面、社会面、そして個人の選択の自由等あらゆる側面からの安全性と適性を考慮し、卵子提供や代理出産プログラムといった第三者を関与してのプログラムを行います。
健康面の安全性については特に、研究結果や統計を分析した上で、先端生殖医療技術だけが一人歩きしないように、極めて注意深く準備がされていきます。

そのような統計や研究結果によれば、50歳以上になりますと、個人差はあるものの、妊娠期間に必然的に増加する体内の血流量への身体的対応ができず、心臓機能(循環器機能)に多大な負担が課せられる、ということです。
また、妊娠中毒症や糖尿病の発病など、極めて危険性が高くなるとも言われています。

そのような一連のリスクは、妊婦となる女性および胎児の健康状態はもとより、生命そのものに大きな危険を投げかけるものだと言われています。
それでも50代前半のあいだは、妊娠中に「ハイリスク(高危険度)妊婦」を専門とする産科医の指導のもと、個人レベルで循環器等の検診に合格された方のみが卵子提供プログラムにご参加いただけることになっています。
しかしそれでも、55歳を越えると一挙に危険度が高くなると言われているため、こちらサンフランシスコ生殖医療センターでは、年齢制限を行っているのです。

もちろん60歳女性の高齢妊娠・高齢出産のニュースがあった以前から弊社には多くの55歳を越える女性からお問い合わせをいただいておりました。しかし担当医師との相談の上、引き裂かれるような思いで、お断りをしなくてはなりませんでした。
医師も私共も、やはりあくまでもお客様の安全を第一に考えるが故の事ですが、それでも、ああ、もっと早い時期に何か手だてがあればよかったのに、とやり場のない気持ちでいっぱいになってしまいます。
こちらでは皆、ご夫婦の健康と生命あって初めてお子さまの幸せがあるという原点にもどることを考えさせられました。

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